NFV先行、ハード提供、無線への拡張と新提案が続々、 ノキアのクラウド化のビジョン

ITの世界の仮想化やクラウド化の進展に続くように、通信事業者のネットワークにも仮想化・クラウド化の波が押し寄せてきています。ネットワークが備える機能を仮想化する「NFV」(Network Functions Virtualization)、ネットワーク全体をソフトウエアで制御する「SDN」(Software Defined Network)により、通信事業者のネットワークの仮想化・クラウド化を推進する動きです。

一方で、移動体通信システムはLTE-Advancedまでの「4G」から、その先の「5G」への変化を求められています。5G商用化へのトレンドの中で、通信事業者のネットワーク仮想化・クラウド化はどのような位置づけを占めているのでしょうか。ノキアソリューションズ&ネットワークス コアネットワーク技術本部 本部長の柳橋達也が、ノキアの考えるネットワークの進化の姿を説明します。

5Gに向かってネットワークのあり方が変化する


移動体通信を支えるネットワークは、これまでも通話から高速化したモバイルデータ通信のインフラへと進化を続けてきました。今ではスマートフォンを中心にした情報機器がモバイルインターネットに接続しています。しかし、この姿は今後、どんどん変化を遂げると予測されています。 柳橋は、「今のモバイルネットワークでは、ネットワークを使って何ができるかというネットワーク中心の視点でサービスが作られています。ところが、2020年に商用化の開始を予定している5G(第5世代移動体通信システム)に向かう中で、ネットワークのあり方が変化すると考えられています。5Gでのネットワークのあり方とは、人やサービスが中心にあるというものです。人やサービスの要求に合わせて、ネットワークをどのように作ってどう使うか――という変化が起こるのです」と全体像を示します。

柳橋が語る5Gの世界ではこのようなことが実現されます。5GではIoT(モノのインターネット)が進展し、様々なセンサーなどが情報を取得します。例えば、ある地域の気象センサーから気温が高いことがわかります。さらに人の流れをモニターすると、ある場所に人が集まっているようです。こうした多くの情報を上位のアナリティクスのレイヤーで分析します。すると、気温の高い場所でイベントがあることが推測できます。そこで、アイスクリームの工場から、イベントがある地域の店舗にアイスクリームを配送するように、指示を出すというわけです。

「5Gの世界というのは、このようなアナリティクスが可能な世界だと考えています」と柳橋は将来のネットワークが作る世界観を紹介します。ネットワークの機能ありきではなく、リアルの世界を生きる人により良い価値を提供するために、ネットワークが縁の下で働くといったイメージです。

4Gから5Gへの過渡期「クラウディフィケーション」

そうしたネットワークの変化の中で、通信事業者のネットワークの機能を仮想化し、クラウドの形態で運用しようという考え方が採り入れられてきています。5Gでは、これまでとはケタ違いの多くのアプリケーションがネットワークを利用すると考えられ、通信事業者はそれぞれの要求に合わせたネットワークを提供する必要があります。そうした要求に応えるには、ネットワークにも柔軟性や拡張性が求められます。そこで、通信事業者のネットワークインフラを仮想化し、クラウドの形態で運用することで柔軟性や拡張性を高めようという考え方が一般化しているのです。

ネットワーク仮想化というと、コアネットワークが持つべき機能を仮想化するNFVと通信事業者のネットワーク全体をソフトウエアで制御するSDNの双方を導入することによって実現するという見方が一般的でしょう。ここで柳橋は、ノキアの考え方として「NFVとSDNの導入は必ずしもセットでなくて良いのでは?」と問題提起をします。

「4Gまでに実現したネットワークから、完全に仮想化した5Gのネットワークに一足飛びに移行するのではなく、その間に過渡的なネットワークの姿があると考えています。ノキアでは、この過渡的な姿をクラウド化するといった意味合いから“クラウディフィケーション”と呼んでいます。現在、クラウディフィケーションしたネットワークは実用化段階に入っています。専用ハードで実現してきたソフトウエアを仮想化した環境で動かして、商用ネットワークを運用することができるのです」(柳橋)。

言い換えると、クラウディフィケーションでは4Gまでで実現してきたシステムのクラウド化を行います。NFVによって、ネットワーク機能をクラウド上で動かすわけです。しかし、ネットワーク制御のソフトウエア化を進めるSDNは、クラウディフィケーションの段階での導入は限定的なものに留まるのでは?というのがノキアの見解です。

柳橋はこう続けます。「既存の専用ハード向けのソフトウエアには、ネットワークを制御する機能が含まれています。これらを仮想化してNFVによりネットワークを構築しても、ネットワークの制御は個別のソフトウエアで実現できているので、全体をソフトウエア制御するSDNはクラウディフィケーションの段階では必ずしも必須ではないのではないかと考えています」。

その先で完全に5Gの世界に移行する際には、アプリケーション環境全体を仮想化した環境で動かすことになります。ネットワークの機能は、ユーザープレーンとコントロールプレーンに分離され、ユーザープレーンはシグナリングに関与しなくなるようなアーキテクチャが考えられます。柳橋は、「ユーザーデータをハンドリングするユーザープレーンと、シグナリングを制御するコントロールプレーンの様々な要素が仮想環境で結びつくような段階になってはじめて、NFVの概念とSDNの概念が本格的に結びつくのではないでしょうか」と説明します。クラウディフィケーションの段階では、まずNFVだけを導入して、要求に応じて時間差でSDNを構築していくという特徴的な考え方をしているのです。

クラウディフィケーションを実現するためのノキアの製品は、すでに技術的な検証をフィールドで繰り返している段階です。商用的に利用できる製品は、2015年末から2016年初頭に出荷できる予定です。