ベンダエンジニア座談会2015

ネットワークに求められる要件は1つではない

野地: 「VoLTEの品質」というのは1つのキーワードだと思うのですが、やはり音声だということで通常のパケットデータのやりとりに比べるとよりシビアになってくると思います。VoLTEを意識してネットワークの品質や信頼性を上げていくためにどのような取り組みが必要か、高橋さんお願いします。

高橋: 私たちがコンサルティングをする時に考えなければいけないのはオペレータが何を考えているかということです。オペレータはエンドユーザのお客様のため、一言でまとめれば「個々のユーザ体感向上」のためにお仕事をされている。具体的には「①パケ詰まりの解消」「②電池持ちの改善」「③ピークスループットを上げる」「④LTEで通信できるエリアを広げる」「⑤いい音で安定して通話ができる」といったことですね。ピークスループットを上げるということでいえばキャリアアグリゲーションですし、通話音質を上げるということであればVoLTEになります。

そうして新技術が導入されることによって、ネットワークの形はどんどん新しくなりますが、今あげた5つの要因というのはある意味トレードオフの関係になっています。

例えば、スループットを上げようとしたり、音声サービスの品質を上げるために、基地局と端末の間の通信を頻繁に行うようになると、電池の持ちが悪くなります。
何かに注力してチューニングする時に、別の何かを損なうようなことが無いように考えることは重要だと考えています。先ほどの例でいえば、品質や速度とバッテリー持ちを両立させるには、「使っている時だけ通信する」ような仕組みを入れることですね。

野地: ネットワークに求められる要件は1つではなく多岐に渡っているので、それぞれを満足するためには様々な努力が必要だということですね。2014年に一番求められていたのはどのようなことだったでしょうか。

高橋: 私はキャリアアグリゲーションが一番大きかったと思います。ピークスループットを上げていくと、エンドユーザの振る舞いが変わってきます。データのダウンロード量が毎年2倍のペースで増えていけば、それに合わせたサービスが出てきます。それで使いづらくなればまた新しい技術を導入して対応するという形になるでしょうが、しばらくは基地局もどんどん増やして、ピークスループットを上げていく傾向が続くと思います。

冨永: 最近はYoutubeもHDが当たり前になり、データ量自体が増えています。スループットが大きくなることはアプリケーションの観点からも大事ですね。

野地: アプリケーションという観点でいえば、動画視聴はダウンリンクに大きな負荷がかかるアプリケーションですが、一方でソーシャルネットワーク系のアプリはユーザが動画を上げるように、アップリンクにも負荷がかかると思いますが。

高橋: アップリンクだと、セルエッジの無線環境が良くないお客様に対して、LTE-Advanced技術を導入して、どんどん使っていただくというところでしょうか。次の時代はそこだと思っています。

冨永: 弊社製品ですと、スタジアム向けの C-RANというソリューションがあります。スタジアムで野球やサッカーの試合を観戦している人々は、SNSに動画をアップロードする事が多い点を考慮して、アップリンクを改善するというもので、これも1つの解決策かと思います。

野地: ノキアは、新しい技術を使いながら、様々なシーンで使えるようなネットワークを目指しているということですね。

Wi-Fiの帯域をより効果的にオフロードに使うソリューション

野地: 今まで話してきたように、トラフィック量は急速に伸びていて、総務省の集計データを見ても、日本国内ではおよそ年間1.5倍ぐらいのペースで増え続けています。そうなると、モバイルネットワークだけではなく、他の技術も使ってオフロードを進めていくことが求められると思います。

一番身近な例でいえばWi-Fiだと思うのですが、今後のトラフィックのオフロードのソリューションとしてどのようなものが考えられるでしょうか。

ヴェリマッティ: Wi-Fiについては、モバイルネットワークとの連携を強化していく方向で考えています。従来であればWi-Fiがあっても、混雑している場合はユーザ体感的には悪いと考えて、あえてWi-Fiを切っているというユーザもいました。
そうしたユーザがWi-Fiに接続するために、モバイルネットワークとWi-Fiネットワークを連携していくソリューションがこれから出てくるでしょう。

野地: 実際にそのようなソリューションは市場に出つつあるのでしょうか。

ヴェリマッティ: 弊社ではRuckus Wireless社のSmart Wi-Fiを取り扱っていますが、基地局とRuckusのアクセスポイントの間でWi-Fiのプロファイルを交換して、空いていたら端末通知し、接続をWi-Fiに切り替える、というソリューションが実現できます。3GPPでも効率よく連携するための標準化は既にされています。

冨永: あとは、Wi-Fiが現在使っている5GHz帯で、Wi-FiではなくLTE方式を使用する「Unlicensed Band」についても協議されています。

他の周波数帯のLTEとUnlicensed Bandをキャリアアグリゲーションでまとめることで、より効率よく、ユーザ体感も落とさないで通信できるし、「LTE」のマークがつくことでお客様も安心する。オペレータにとっても「LTE」マークがついているということは大事かなと思いますので、そういった標準化も今後は進められていくのではないでしょうか。

野地: Wi-Fiの技術だけではなく、いかに効率よくモバイルと連携させるか、周波数のリソースとしてもどう活用していくかが重要になるということですね。

ヴェリマッティ・ラハティ Veli-Matti Lahti