ベンダエンジニア座談会2015

2014年の日本の通信業界は、LTEの全国展開を各社がほぼ終え、NTTドコモ様、KDDI様、ソフトバンクモバイル様の各社がVoLTEサービスの提供を開始、またKDDI様はキャリアアグリゲーション(CA)による150Mbpsのサービスを開始し、LTE-Advancedの時代がスタートしました。 また、VoLTE導入に先駆けた各社の「通話し放題」を軸とした新料金プラン投入、ユーザの使い方に合わせた様々なサービスメニューと料金プランを提供するMVNO(Mobile Virtual Network Operator)の台頭、総務省によるSIMロック解除義務化の方針が出される等、ユーザの多様化に合わせた大きな変化が始まっています。 一方で、3GPPでは5Gの要件定義に向けたワーキンググループが立ち上がり、いよいよ「LTE-Advancedの次」に向けて動き出しました。 様々なことがあった2014年を振り返り、2015年には何がテーマとなるのか、現場の最前線でネットワークの「今」を見ているノキアの技術者が語り合いました。

出席者:
冨永 剛(RAN技術本部 本部長)
柳橋 達也(コアネットワーク技術本部 ソリューションマネージャー)
高橋 周作(サービス事業本部 ネットワーク設計・最適化部 プログラムマネージャー)
ヴェリマッティ・ラハティ(セールスデベロップメント OEMソリューションズ 統括部長)

司会進行:
野地 真樹(ストラテジー&ビジネスオペレーション 事業戦略担当部長)

2015年のLTE-Advancedはキャリアアグリゲーションが進化、
CoMP等の展開は2016年以降本格化

野地: 恒例の年末座談会ですが、1年を振り返るところから始めたいと思います。まず、冨永さん、いかがでしょうか。

冨永: 2014年はオペレータ各社とも基本的なネットワークは整備された後のトピックということで、NTTドコモ様、KDDI様、ソフトバンクモバイル様の各社VoLTEのサービスインがありました。
また、LTE-Advancedの技術要素としてキャリアアグリゲーションもKDDI様で商用化され、他の2社も間もなくサービスを開始される予定となっております。

野地: あくまでも技術用語だった「キャリアアグリゲーション」が一般のCMで流れるほどオペレータのマーケティング戦略の柱の1つになったことは、ここまできたのかという感じはありました。 冨永: キャリアアグリケーションは単純にピークスループットが上がりますから、ユーザ体感が劇的に上がりますし、数字でわかりやすく表現できるところがCM等には向いているのだと思います。今日本で商用化されているものは10MHz+10MHzで下り最大 150Mbpsのスループットが実現できています。 2015年に向けては、年明けにリリースする弊社製品では20MHz+20MHzで下り最大300Mbpsが実現できるようになります。 また、今のキャリアアグリゲーションは2本のキャリアを束ねて提供されていますが、これが3本束ねられるものも出てきますので、ここまでは2015年の早い時期にリリースされるでしょう。 野地: LTE-Advancedの技術要素はキャリアアグリゲーション以外にもありますが、それらの技術の導入も2015年には進んでいくのでしょうか。

冨永: 次の段階としては、 CoMPの導入によって干渉を低減して、セル出力の協調を行うことでパフォーマンスを上げていくことでダウンリンクの速度を上げていくといったことも進められていくと思います。ただ、こちらの方は、ネットワークアーキテクチャの変更が必要になりますし、ソフトウェア的にもベースバンド処理のプロセッシングの変更等が必要になりますから、少し時間がかかるでしょう。3.5GHz帯の整備に合わせて2016年以降に展開されていくのではないかと考えています。

VoLTEローミングとVoLTE網相互接続に向けた動きはじまる

野地: 冨永さんのコメントの中で“VoLTE”というキーワードが出ましたが、柳橋さん、VoLTEについてはいかがでしょうか。

柳橋: 2012年頃、当時は日本で誰もVoLTEを知らないくらいの時期から携わっていました。当然VoLTE端末も無いので、疑似環境を構築してエンドツーエンドのVoLTEコールを実現したのも、おそらく日本で最初だと思います。そのようなプロジェクトでしたから、いよいよ商用化され、しかもテレビCMで「VoLTE」というキーワードそのものが使われるようになることは予想もしていなかったので、個人的にはとても感慨深いものがあります。

野地: VoLTEといいますと、音声をLTE上で流す技術ですが、既にスマートフォンではLINEをはじめとする様々な OTTアプリを使った音声通話は実現されています。VoLTEはそれらとどのように差別化されるのか、特にオペレータにとってどのような競争力につながるのかというところをもう少し詳しく教えていただけますか。

柳橋: まずは「品質の差別化」ですね。オペレータグレード、つまりオペレータとしての音声品質をきちんと担保できる仕組みがVoLTEにはありますが、OTTの音声サービスには無いというところが一番の差別化ポイントです。

今後おそらく音声コーデックは今よりももっとリッチになって、最終的には圧縮がそもそも無いというところまでいくと思います。そうすると、ますます音声品質の差別化はOTTとの間で広がっていくのではないかと考えています。

野地: 現在各オペレータで提供されているVoLTEは、オペレータごとに閉じていて、同じ会社のユーザ同士、しかも対応端末間でしかそのメリットを享受できないという状況ですが、今後どのように変わっていくのでしょうか。

柳橋: もう既に動きが一部始まっていますが、2つ大きなトレンドがあります。

1つはVoLTEローミングです。今はまだVoLTEが利用できる国が少ないのでそれほど考えなくてもよい状況ですが、今後様々な国で展開されるようになれば必要となってきます。VoLTE端末を使えるサービスをどんどん広めることは、当然、加入者が積極的にVoLTEにマイグレーションするきっかけになりますから、ローミングというのは重要なキーワードで、おそらく次のステップになると思います。

VoLTEローミングとおそらく同じぐらいのフェーズで、VoLTEの相互接続が実現可能になるでしょう。日本のオペレータ間でも、近い将来、VoLTEユーザ同士で回線交換を通さず直接VoLTEで話せるようになるのではないでしょうか。

野地: オペレータ間をまたぐ場合は、接続までの時間が短い等、VoLTEのメリットは変わらないのでしょうか。

柳橋: そうですね、そのあたりはVoLTEを実現する技術そのものが持っているメリットなので、それはそのまま享受しながら、回線交換も使わない、ピュアIPの世界で、VoLTE間の相互接続をするというのが実現できると思います。

野地: なるほど、ますますVoLTEを使うシーンというのが今後広がっていくと。

柳橋: そうですね、それが各オペレータの望んでいることだと思います。