ネットワークエッジで実現するユーザエクスペリエンス

最新の基地局はインテリジェントノードへと進化しており、都度ユーザが必要とする様々なコンテンツをリアルタイムで配信できるようになります。この進化における重要な概念としてモバイル・エッジ・コンピューティング(MEC)があります。本レポートでは、このMECの最新動向とノキアの取り組みをご紹介します。

MECは、有用な情報をネットワークのエッジに配置することで、ユーザやオブジェクトからのスムーズな接続を可能にする技術です。これにより、通信事業者は非常に優れたサービスを提供できるようになり、ネットワーク効率が向上します。実際、最新の基地局は、あらゆるコンテンツやデータを保存するだけではなく、コンテンツをネットワーク条件やユーザのニーズに適合させることが可能です。

MECは欧州電気通信標準化機構(ETSI)のISGの設立により注目されるようになりました。この取り組みではオープンアーキテクチャとアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)に着目しており、3G無線ネットワークコントローラ(RNC)やマルチテクノロジのセル・アグリゲーション・サイトを利用して、LTEマクロ基地局(eNodeB)の無線アクセスネットワーク(RAN)内で実行可能にすることを目指しています。

中東での初の試み

ETSIでは、2014年に実施された世界各国の様々な技術経験を蓄積しています。例えばサウジアラビアのZain社は、中東地域初の試みとして、自社ネットワーク内でライブデモを実施し、成功を収めました。このデモは、基地局にアプリケーション、サービス、コンテンツを配置してライブ環境下で優れたサービスを提供するものです。これにより通信事業者はスループットを向上させ、拡張現実や位置情報等のカスタムアプリケーションを提供することによって、加入者のサービスエクスペリエンスを強化できます。

Zain KSA社のネットワークエンジニアリング担当シニアディレクターであるスルタン・アル・デガイテール(Sultan AlDeghaither)氏は、次のように述べています。「当社は、お客様にとって魅力的な新サービスを導入できるよう全力で取り組んでいます。ノキアのLiquid Applicationsは、全く新しいサービスエクスペリエンスを実現できるソリューションです。」

体験をさらに身近に

MECは利用者にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。ドイツのサーキット、ニュルブルクリンクでは、レースファンが、自分のモバイル端末で会場内の様々な場所のリアルタイムのビデオフィードを観賞するという、全く新しい楽しみ方を体験しました。

時速250 kmを超える車内からのライブ・ビデオ・ストリーム配信には、ノキアによるLTEネットワークとストリーミング技術が採用されました。これにより、テレビの完全生中継よりもはるかに低いコストで高品質フルハイビジョンのビデオストリーム配信に成功しました。このDeutsche Telekom社のLiveStream Performソリューションを会場に設置するまでの所要日数はわずか1日でした。Liquid Applicationsでも、このような基地局からのリアルタイムコンテンツの直接配信が可能です。

シンガポールのBNPパリバWTAファイナルでも同様に、観客が新たな楽しみ方でテニスマッチを体験しました。StarHub社が試験的にシンガポール・スポーツ・ハブに実装したLiquid Applicationsにより、観客が自分の携帯端末から好みのアングルのカメラを選んで、テニスコート内のプレーにズームインすることができるというものです。

より安全な運転を実現するコネクテッドカー

コネクテッドカーについては、様々な議論が繰り広げられています。ノキアのLiquid Applicationsのエッジコンピューティング機能は、コネクテッドカー市場で重要な役割を果たします。DSRC(Dedicated Short Range Communications:スポット通信)を採用することで、専用ネットワークを構築するよりも短期間に低コストで、全国規模のV2I(Vehicle to Infrastructure)サービスを実現します。

T-Mobile US社は、ノキアの地図アプリHEREの高精度地図データと自動車の位置、速度、方向等の情報を組み合わせ、Liquid Applicationsを実装したモバイル基地局から自動車へミリ秒単位でデータを送信できるようになりました。これによりドライバーは、危険回避のための車線変更、減速、ルート変更をスムーズに行えるようになります。

イノベーションへの取り組み

ノキアとIntel社が共同で管理する、英国バースの新イノベーションセンターでも高度なアプリケーション開発が進んでいます。ノキアのAppFactoryアプリケーション開発プログラムの支援の下、Liquid Applicationsベースの新しいモバイル・ブロードバンド・アプリケーションやサービスの開発が行われています。

サードパーティアプリケーションを基地局でホストするようにLiquid Applicationsを拡張したことで、分散コンピューティングによってユーザエクスペリエンスやモバイル通信事業者のサービスが、どのように差別化されているかを調査できるようになりました。

コンテンツ配信ネットワーク(CDN)技術とビデオオンデマンド(VOD)サーバのプロバイダであるBroadpeak社は、この分野でノキアと協業している革新的な企業です。同社はノキアのAppFactoryに参画し、LTEネットワーク向けライブTVソリューションを開発、テストしています。