5Gの展望 – 多様な業界での活用

第5世代モバイル通信(5G)に関して、実装やパフォーマンスといった技術面の課題解決に向けた議論が重ねられています。ただ、社会に与える影響については、これまであまり語られていませんでした。5Gは人々のコミュニケーションに革新を起こすと予測されています。実際に、様々な業界のビジネスや人々の生活にどのような変化をもたらすのかを展望します。

IoTによる変革

ノキアのCEO、ラジーブ・スリ(Rajeev Suri)はインタビューで次のように述べています。「今後10年間で、"ここまでがテクノロジー業界、ここからがユーザー業界"といった境界線はなくなり、あらゆるものがテクノロジー主導となります。Programmable World(プログラム可能な世界)とIoT(モノのインターネット)の実現により、あらゆる業界で非効率な要素が取り除かれていくでしょう。」

例えば、自動運転車の実現によって、全世界で毎年130万人にのぼる交通事故死者数は大幅に減少すると考えられます。さらに環境排出物の縮小や交通渋滞の緩和も可能となります。

IoTとセンサーの活用によって、医薬品業界にも変革が起こります。臨床試験の自動化、リードタイムの短縮などにより、新薬の市場投入におけるコスト削減が可能となります。

漏水予防対策により公共水道システムも安定します。現在ヨーロッパでは、低品質の給水管材や不適切な給水ネットワークによる漏水で総給水量の20%が失われるという問題を抱えています。センサーから収集したビッグデータを分析して漏水箇所を検知することができれば、速やかな対策が可能となります。

医療業界の躍進

ラジーブ・スリは、医療業界も大きな前進を遂げると予想しています。 「救急医療において、ICUの入院患者の約90%が適切にモニタリングされています。しかし、退院後の患者の状態は全く管理されていませんでした。在宅でもセンサーを活用できれば、医療のあり方を大きく変えることができます。病院で使用している診断機器を小型化して患者宅に配布し、クラウドに接続できるようにすれば、離れた患者の様子を病院側からモニタリングすることができます。」

しかし、このビジョンを商用化するには、まだいくつもの課題が残っています。

「標準化、さらにプライバシーとセキュリティの問題を解決しなければなりません。インテリジェントな機能を持たない個々のセンサーやデバイス単体でセキュリティを担保するのは困難であり、ネットワーク経由でセキュリティを管理する必要があります。」

垂直連携する業界全体をターゲットに

5Gのさらなる課題は、「垂直連携する業界全体の参入を促す魅力的な統合型システムの実現にあります」とラジーブ・スリは指摘します。「IoTの接続プラットフォームの開発も進んでいますが、より大きな進歩が期待できるのはサービスとアプリケーションです。接続プラットフォーム、IoT対応プラットフォームが完成すれば、垂直連携する様々な業界が参入してくるでしょう。」

その代表が医療業界や自動車業界です。複数の自動車メーカーでは1,000億ドル以上のビジネスチャンスが創出される可能性を予測しています。

「自動車を他業界のエコシステムとどのように接続するかが大きな課題となります。」

さらに自動運転車の概念を広めることも重要です。「このプロセスには段階的なアプローチと多くの時間が必要となります。まずは部分的な自動運転から開始し、クラウド接続によって事故の危険性を減らしていきます。ここではレイテンシーの低減が非常に重要です。次に高速道路等に自動運転の対象範囲を拡大していきます。様々な困難はありますが、現在のようにモバイルが広く普及したことを考えれば、自動運転車の普及も決して夢ではありません。」

5Gの実現に向けて

ラジーブ・スリは、IoTと5Gは同じ目標に向かって共に進化していくと述べています。「5Gは4GよりもIoTの実現手段として有望です。すなわち、5Gの登場によってIoTのニーズをより大きく満たすことが可能となります。」

コアネットワークの展開やクラウド及びNFVへの移行等、既に5Gネットワーク実現に向けた様々な動きが起こっています。

ノキアでは、ファイバ回線に隣接しながらも直接接続のない住宅地に、5G対応の高速ブロードバンドを導入する事業を推進しています。

このソリューションでは、電柱近くに設置された高スループットの5G対応ホットスポットを使って、既存のファイバネットワークからのブリッジを構築します。このようなアプローチにより、各戸に1 Gbps以上のスループットを保証することが可能となります。

ただ、その一方でネットワークの安全性が懸念されているのも事実です。

「これからはネットワークセキュリティがますます重要となります。通信業界ではまだ十分なセキュリティ対策がなされていません。例えば急速に蔓延しているモバイルマルウェアは、簡単にネットワークの抜け穴から侵入してネットワークをダウンさせたり、個人情報を盗み出したりといった深刻な脅威となっています。」

数年前からノキアでは品質重視を掲げ、その考え方を徹底した製品の設計に取り組んできました。今後はセキュリティについても同様に、より安全性の高い製品設計を推進すると共に、総合的なシステム監視や監査を通してあらゆる製品の安全確保を目指します。

「ベルリンにあるノキア・セキュリティ・センターは、我々のセキュリティへの取り組みの重要拠点です。」

こうしたノキアの総合力から生み出されたモバイルガードは、トラフィックパターンを予測してネットワークの抜け穴を検知するのに役立ちます。自動運転車をウイルスによるシグナル妨害から守る等、IoTアプリケーションにおけるこうしたソリューションの重要性が加速的に高まっています。

「自動運転車やネットワークにつながる医療機器の利用には、堅牢かつ安全なネットワークが必須です。ノキアはパートナーと共に、サイロ化されたデータを一箇所に集めて分析アプリケーションによって検証しています。」

今後、多くの産業においてかつてない変革が起こると予想されます。そうした中で、消費者が享受するメリットについても、さらに明確なビジョンが示されていくでしょう。より効率的な時間の利用、より多くの有益な情報へのアクセス、より安全性の高いインテリジェントなネットワーク等が、今後の人々の生活を支える基盤となります。

世界中に分散する500億以上のモノ、センサー、デバイスが相互につながることで、我々の生活はより大きく変わることになるでしょう。