5Gに関する間違った通説とその真実

通信業界では5Gに関する様々な間違った通説が飛び交っています。実体が無い中で騒ぎすぎだと言う人がいる一方、既に5Gシステムは運用開始も間近だ、と語る人もいます。果たして、何が真実なのでしょうか。 本レポートでは、これらの間違った通説を客観的に見つめ直し、5Gシステムの登場によって実際に何がもたらされるのか、そして、5Gの必要性、その実体、実現方法等を具体的にご紹介します。

間違った通説その1: 5Gの主要目的は速度と容量である

5Gは将来市場の需要に応えられることが必須です。今の世代の技術からの改善点や差別化すべき点、すなわち、今後必要になる新たなサービスやユースケースを考慮する必要があります。15年もすれば、今は考えもつかない様々な利用方法が生み出され、それが当たり前になっていることも考えられます。事実、インターネットに接続されるデバイスの数は、世界の総人口の10~100倍に上ろうとしています。「モノのインターネット(IoT)」の急激な拡大によって、数千億もの機器がデータを検知したり、処理したり、転送したりする時代が来るのです。

5Gの多様なサービス,ユースケース,要件,スループット,デバイス,コスト,パワー,レイテンシ,遅延,信頼性

最近話題を集めている無人自動車ですが、実際にどのような機能が実現されるのでしょうか。まずは、地図のダウンロード機能やセキュリティ警報機能、さらに、ブレーキアシスト機能等が実装されることになります。そして2030年までに自動車は完全に自動化され、運転手が新聞を読んでいる間に遠く離れた目的地まで移動したり、交通情報をリアルタイムでダウンロードして渋滞を回避したりするようになるかもしれません。あるいは、自動車に位置情報を送るだけで、子供をパーティー会場に迎えに行けるようになる可能性もあります。また、自動車間(V2V)や自動車とインフラ間(V2I)で直接通信を行うことにより、交通の安全性や効率性が大幅に向上します。

もう1つ現実のものとなりつつあるのが、スマートホームです。温度センサー、窓自動開閉制御、暖房管理、侵入警報、家電製品等、全てが無線でつながり、住人がいつでもどこにいても自宅の情報を管理することができます。こうしたセンサー情報の多くは、データレートや電力量が小さくコストも低いですが、監視装置等ではリアルタイムのHD動画を扱うことになります。よって、5Gでは消費電力の効率化や不要な信号の抑制だけでなく、多様な接続デバイスの一元管理が必須となります。

医療の面でも様々な用途が考えられます。モバイル通信を基盤とした無線センサーを利用して、リモート環境での心拍数や血圧値のモニタリングが可能になります。

さらに、5Gを利用した「タクタイル(触覚)インターネット」も可能になります。低遅延の通信により、人間にとって危険な場所での建設作業や保守作業はロボットを遠隔操作して行うことができます。このような場合、視覚や触覚フィードバックを瞬時に同期するため、応答時間は数ミリ秒未満であることが求められます。

こうした事例から分かるのは、5Gの性能目標は速度や容量にとどまらず、接続センサーのコスト節減をはじめ、低電力、ゼロ遅延等、極めて多岐に渡るということです。5Gのユースケースは多様であり、用途に応じて要件も極端に異なります。5Gは、マシン型通信を念頭に設計されるモバイル規格の第一世代だと言えます。

間違った通説その2: 5G無線は4Gに代わるものである

この通説は間違いです。むしろ、5G無線は既存技術と新技術を融合して、LTEを補完するものになります。進化し続けるLTEは、2020年以降もマクロレイヤでの様々な需要に応えることができるでしょう。よって、5Gが4Gに取って代わる必要がありません。5GはLTE-AdvancedやWi-Fi等の既存技術と、超高密度な展開、高信頼性の通信、超低遅延を実現する新技術が共生する統合体なのです。

間違った通説その3: 5Gとは無線技術の進化である

5Gでは新たな要素が組み込まれ、システムが進化します。しかし、これは単なる無線技術の進化ではなくネットワークアーキテクチャ全体を網羅する革新となります。2020年以降の需要に応え、複雑なマルチレイヤやマルチテクノロジーのネットワークを管理し、柔軟性を確立するためには、ネットワークアーキテクチャの根本的な変革が必須です。

自動最適化を行うには認知型のネットワークが必要になります。ビッグデータ分析や人工知能を活用するコグニティブネットワークであれば、人間には複雑すぎる最適化の課題も解消できるはずです。既存のリソースを最大限に活用するため、ネットワークのあらゆる部分にクラウドの枠組みが導入されます。要するに5Gとは、プログラム化され、包括的に管理されたソフトウェア主体のネットワークのことなのです。

間違った通説その4: 5Gシステムのデモ版はすでに市場に存在する

5Gはまだ十分な定義が確立されていません。現段階で存在するデモは、あくまで試験的でサブシステムの概念のみに焦点を当てているものです。現在、5Gは調査及び研究の段階で、新技術に向けた様々なオプションが検討されています。そのため、5Gのビジョンや、要件、構成要素に関して、団体や企業の間で足並みを揃えることが強く求められています。5Gシステムの準商用版は2018年の完成を目標としていますが、大規模な展開は2020年以降になると予想されます。

5Gを実現するために

新たな周波数帯: さらなるキャパシティとデータレートが求められる5G時代の需要に対処するには、無線周波数の拡大が必要です。これまでは、主にカバレッジが広いという性質から、6 GHz未満の周波数のみを検討の対象としてきました。6 GHz未満の周波数帯の拡大は(5Gにとっても)必要不可欠であり、割り当て済みの周波数帯をより効率的に利用できるようにする革新的技術も実用化されようとしていますが、さらに、6~100 GHzの新たな周波数帯利用のニーズも高まっています。周波数帯の拡大無しには、5G時代のキャパシティとデータレートの需要に応えることはできないでしょう。

超高密度展開を可能にする新たな無線アクセス技術: センチメートル波帯及びミリ波帯を利用して超高密度高容量シナリオに対処するには、massiveMIMOとビームフォーミング技術を活用できる新しい無線インターフェースが必要です。また、多様な特性を持った広範な帯域を扱うには、柔軟な無線インターフェースが欠かせません。ミリ波帯の実用性能を把握するには、こうした周波数帯のチャネル測定とモデリングをしっかりと行う必要があります。その結果、1~2 GHzの連続するキャリア帯域幅の利用が実現します。

最適化されたフレーム構造: 自動車間通信やタクタイルインターネットをはじめとする未来のアプリケーションの多くで求められるのが超低遅延です。無線での遅延を1ミリ秒に抑えるには、極めて短い無線サブフレームが必要です。これを柔軟なダイナミックTDDと併せることで、システムの帯域効率と電力効率を最適化できるようになります。

アーキテクチャの技術革新と様々なテクノロジーの統合: 5Gで実現するのは、高品質で一貫した人やモノのつながりと、キャパシティの無限の概念です。そのためには、ユースケースやネットワークレイヤに応じた様々なソリューションを、統一したネットワーク運用によって管理することが重要です。異なる無線アクセスレイヤやテクノロジーが互いに緊密に連携することで、コグニティブ機能やSDN(Software Defined Network)テクノロジーを利用可能にします。

先陣を切るには単独で進み、大きな成功を望むなら共に進む

時代は5Gへと大きく動き出しており、世界中の多くの団体や企業が他より優位に立とうとしのぎを削っています。しかし5Gの標準化を成功させるためには、出自を問わず、最も優れたアイデアを採用することが重要です。また、通信以外の業界からの要望にも真剣に耳を傾ける必要があります。要件設定、技術研究、さらには標準化に向け、同じ方向性に共に進むことが大切であり、そのためにフォーラムが重要な役割を担うと言えるでしょう。これまで各世代の規格が通信業界で実現されてきたように、ノキアの研究者やエンジニアは5Gの実現に向けてテクノロジーの可能性を広げるべく熱意をもって取り組んでいます。

5G商用化へのロードマップ

5Gが実現すれば、単に高速で大容量のネットワークが可能になるだけでなく、私たちの生活や仕事のあり方に大きな変革をもたらすことが期待されます。