Vision2020から5Gに向けたネットワークの展望

プレゼンレポート

ノキア ソリューションズ&ネットワークス株式会社 テクノロジー・ディレクター 赤田 正雄

――ノキア ソリューションズ&ネットワークス株式会社
テクノロジー・ディレクター  赤田 正雄

Experience Day 2014では、次世代移動通信システムとしての姿がはっきりと見えてきた「5G」について解説しました。「5G」は要求条件がより明確になり、それに対してどのようなアプローチで実現するかの検討が始まっています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックのタイミングまでに商用化の開始を目指す「5G」の姿を、ノキア ソリューションズ&ネットワークス(以下、ノキア)の研究開発の状況を踏まえつつ読み解いていきます。

2020年のモバイルネットワークの姿は、単に人々をつなぐだけでなく、様々な世界をつなぐものになるでしょう。そうした時代の到来に向けて、ノキアは2020年には「1人1日1GB」が必要になると考えています。それをどのように具体的に達成するかが重要な課題です。

「1人1日1GB」を達成するには、6つの要素の実現が必要だと考えています。

  • ネットワーク容量は現在の1000倍
  • 遅延はミリ秒単位
  • ネットワーク制御の自律化
  • 消費電力のフラット化
  • テレコムインフラのクラウド化
  • ネットワークサービスのパーソナル化
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「ネットワーク容量の増加」や「遅延の減少」は理解しやすいところですが、他の4項目は少し説明を加えましょう。

「ネットワーク制御の自律化」は、ネットワーク容量の増加に向けて基地局の密度を上げた時に、ネットワークの運用の難易度が高まることから、人手をかけずに運用できるようにするために必要な要件です。同じく、基地局の密度が上がることで消費電力が現在と同じならばトータルの消費電力は増えてしまいます。最低限でも「フラット」、トータルの消費電力を現在と同レベルに抑える「消費電力のフラット化」が必要になります。

「テレコムインフラのクラウド化」は、ネットワーク機能の仮想化(NFV)等クラウド技術を使って、キャリアグレードのインフラを構築することです。さらに「ネットワークサービスのパーソナル化」としては、今後はより個人個人へのネットワークサービスの最適化が可能なインフラを整備していきます。

これらを実現するために、ノキアでは製品やソリューションを具体化させる「ロードマップ」とは別に、「フューチャーワークス」を設けています。リサーチ段階の技術や要件に対して、目標を定めて研究開発を進めているものが、フューチャーワークスに当たります。

1000倍を超える容量に対応 重要イノベーション

今回の「Experience Day 2014」では、ロードマップに示したような将来に向けた技術開発の成果を紹介しています。基地局間の干渉を制御する「eICIC」(enhanced Inter Cell Interference Coordination)については実際のデモを見られます。フューチャーワークスとしては、軍用レーダや放送等に割り当てられている周波数帯域を通信にも使うASA(Authorized Shared Access)、無線LAN等が使っているアンライセンスバンドを活用した「LTE-U」、クラウドで無線アクセスネットワークを構築する「クラウドRAN」等があります。

容量の増大に向けてCAやMIMOが効果

ネットワーク容量の増加を支える技術について、いくつかのデータを紹介しましょう。LTEは2014年には300Mbpsを既に実現しています。450Mbpsや600Mbpsのキャリアアグリゲーション(CA)も2015年、2016年にかけて計画されています。キャリアアグリゲーションは、ネットワーク容量の1000倍対応にも寄与する技術です。

キャリアアグリゲーションは、帯域を足し算して高速化しているだけなので、容量増加に効果があるのだろうか?と疑問に思う方もいるでしょう。しかし、容量方向でも40%程度の増加の効果が得られることが判っています。これは、複数の帯域を別々に運用していると、端末の一つの帯域への偏在等により利用効率に低下が起こっていることが原因です。キャリアアグリゲーションではスケジューラーが周波数帯ごとの状態を監視して端末を最適に割りつけます。これによって、周波数の有効活用が可能になり、容量増加の効果が得られるという仕組みです。

キャリアアグリゲーションは通信容量増大にも寄与

送受信側で複数のアンテナを利用する MIMOについても、ネットワーク容量向上の効果が確認されています。例えば4×4 MIMOで高速化するには、基地局側にも端末側にも4本のアンテナが必要です。ところが、基地局側のアンテナだけ4本にした場合にも、無線区間のリンク品質が向上し、高速化が実現されることがわかってきました。端末側のアンテナは2本のままでも、ネットワーク容量を向上させられるのです。

基地局アンテナ4本化 4x2MIMO による通信容量の増大

LTE-Uは、無線LAN等で使っている5GHz帯のアンライセンスバンド、すなわち免許不要の周波数帯もLTEで活用する技術です。この帯域を、ダウンリンク専用のベアラとして使い、キャリアが持つライセンスバンドのLTEとキャリアアグリゲーションすることで、ダウンリンクの高速化と容量アップを目指します。

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