ビッグデータ活用で通信事業者の価値創造を支援する「Telco Analytics」

Date: 
08 December 2015
Location: 
Japan

「ビッグデータ活用は、通信事業者に新しい収益源をもたらすでしょう」。こう語るのはノキアソリューションズ&ネットワークス ソリューション・マネージャーの松﨑裕樹です。2015年11月26日に開催された「次世代ネットワーク&サービスコンファレンス」(主催:リックテレコム)のセッション「Telco Analyticsで実現する価値創造」で、通信事業者のビッグデータ活用の意義について事例を交えながら説明しました。

松﨑はまず、Telco Analytics(テレコ・アナリティクス)という言葉について「Telco Analyticsは、ノキアが今回初めて日本で公にする言葉です。ノキアのTelco Analyticsとは、通信事業者のユースケースに特化したビッグデータ活用のフレームワークを指します」と説明しました。ビッグデータ活用は、内外の多様な産業ですでに取り組みが進んでいます。そうした環境の中で、通信事業者も様々なデータを取り扱っており、ビッグデータ活用することで新しいビジネスチャンスにつなげるための仕組みをノキアが提供しているのです。

通信事業者の3つ領域のデータを分析して活用

通信事業者が取り扱っているデータのうち、データ活用に関連が深いカテゴリーはどのようなものがあるでしょうか。松﨑は大きく3つのカテゴリーを示します。

1つは、オペレーションの効率化などオペレーション・サポート・システム(OSS)/ビジネス・サポート・システム(BSS)の分野の「ネットワーク/サービス・マネジメント」です。2つ目は顧客満足やロイヤリティー向上、乗り換え防止などの「カスタマー・マネジメント」、3つ目はデータを活用してマーケティングや新しい収益源、ビジネスモデルを創出する「データ・マネタイゼーション」で、これらは顧客関係管理(CRM)やビジネス・インテリジェンス(BI)、データウェアハウス(DWH)分野に関連したデータです。

すでに通信事業者にはこれらの3つのカテゴリーの多くのデータが蓄積され、さらに日々刻々と新しいデータが生まれています。これらのビッグデータを活用することで、通信事業者が新しい価値を手に入れる手助けするのがTelco Analyticsというわけです。しかし、データを有効に活用するためには課題もあります。

「それぞれカテゴリーで個別のデータを収集する工程も大変な作業ではありますが、これは人間がやろうと思えば対応可能な範囲です。しかし、個々のデータは収集されていても分散して管理されていたり、複数のデータを統合して分析したい場合、そのような横断的なシステムや業務プロセスがなかったりして、タイムリーな洞察やアクションをとるのが難しいことが課題です」と松﨑は説明します。せっかくデータがあっても、実際にタイムリーに分析を終えて次のアクションを起こすことにつながらないというわけです。「従来のデータ分析では、収集、分析、意思決定、アクションとそれぞれの過程に人間が関わり、断続的に実行されます。このため、データ収集からアクションまでに、数日から数週間の時間がかかります。これでは、分析結果が出るころには、ネットワーク負荷や顧客満足の状況はすでに変わっているでしょう」(松﨑)。

そこで、ビッグデータ活用が力になるというのがノキアの提唱するTelco Analyticsの考え方です。ビッグデータでは、常に新しいデータが流れ込んできて、それらのデータを次々に分析していきます。この分析処理は人間には手に負えず、機械学習や自然言語処理(NLP)などのアルゴリズムによってリアルタイム処理が行われます。その後の意思決定やアクションの部分は、分析結果から人間が判断する場合もあれば、自動化して対応する場合もあります。「ビッグデータ活用により、データの収集からアクションまでを連続したプロセスとして自動的に処理できるようになるので、分析結果の反映までのスピードアップが可能です」と松﨑は語ります。今、ネットワークや顧客に起こっている事象をリアルタイムに分析し、すぐに対策を施せるわけです。

3タイプの分析手法を適材適所で活用

ノキアのTelco Analyticsの特徴として松﨑は、「3つの分析手法を備えること」を挙げます。その3つとは、過去から現在までのデータを使って、これまでの事象を分析する「記述型分析」、過去から現在までのデータで予測モデルを作り、将来を予測する「予測型分析」、リアルタイムにデータを処理して自律的に判断する「オンライン分析」です。3番目に挙げたオンライン分析は、リアルタイムに人手をかけずにシステムが自律的なアクションを起こすことができる手法です。これが、通信事業者のデータ活用の課題となっていた「スピードアップ」を実現する1つのカギになるというわけです。

Telco Analyticsが備えるこれらの3つの分析手法を使うことで、通信事業者のデータ活用のカテゴリーである「ネットワーク/サービス・マネジメント」「カスタマー・マネジメント」「データ・マネタイゼーション」を、統合して分析できるようになります。すなわち、Telco Analyticsが提供するビッグデータ技術によって、OSSと「カスタマー・エクスペリエンス・マネジメント」(CEM)を統合・刷新することができるのです。

松﨑は、Telco Analyticsを導入することで、業務改善につなげている海外の事例を紹介し、Telco Analyticsが通信事業者にもたらす効果を説明しました。

1つが、「予測型分析」を活用した事例で、新しい収益源の創出につながっている米国のT-Mobileの事例です。従来は加入者のデータが統合されておらず、キャンペーンがタイムリーに打てないという課題がありました。Telco Analyticsを導入して予測型分析を利用することで、統合したデータセットを使ったリアルタイムな予測が可能になりました。「加入者がこれから何をしようとしているかがリアルタイムにわかるようになり、即時にパーソナライズされたキャンペーンの立案が可能になりました。これまで5日ほどかかっていたキャンペーン実行までの時間は、自動化により1時間に短縮し、キャンペーンを打てる回数が大幅に増加するとともに、クリックスルー率も大きく改善されました」(松﨑)。

2つ目が「オンライン分析」を活用した事例で、動的なQoSのコントロールを可能にしたケースです。加入者の経験をより高い水準に保てるようにリアルタイム制御する「ダイナミック・エクスペリエンス・マネジメント」(DEM)を活用し、一定のネットワークキャパシティーでユーザ経験を高めることが目的です。「DEMは、ユーザ経験に影響があるHTTPや音声、動画などのセッションと、FTPなどのバックグラウンドのバルクデータのセッションの分布を動的に変化させることができます。DEMを利用しないと、YouTubeで動画を視聴するセッションが増えると動画がスタックしてしまう状況でも、DEMでYouTubeが動画データをダウンロードしているときだけリアルタイムにバックグラウンドデータの通信を抑制することで、動画が動き続けることが可能です」(松﨑)。

DEMのトライアルの結果では、DEMをオンにすることで動画のダウンロードの成功率が飛躍的に向上した一方で、バックグラウンドデータのスループット低下はほとんど見られませんでした。回線利用効率の向上と、ユーザ経験の改善という2つの課題を同時に解決できるソリューションです。松﨑は「大量なデバイスが接続するIoTのネットワークにも応用できるソリューションとして、検討を進めています」とさらなる展開も示唆します。

最後が「記述型分析」を活用して、顧客の経験を単一指標で評価する事例です。松﨑は「顧客の経験は、ネットワークのパフォーマンスだけでなくて、カスタマーケアや料金、デバイス、ショップでの経験などいろいろな要素が組み合わさっています。一般に満足度はアンケート調査などで調べることになり、迅速な対応ができません」と課題を説明します。Telco Analyticsでは、顧客の経験に関わる多くの非構造データを合わせた統合的な指標として「カスタマー・エクスペリエンス・インデックス」(CEI)を用意しました。現在のデータを使う記述型分析の手法です。これにより、個別のデータを分析する必要がなくなりCEIの点数からユーザ経験の現状を知ることができます。すでに「他の通信事業者への乗り換え予備軍のケアにCEIを利用したところ、3年間で約3億円の収益を確保できたケースがあります」(松﨑)と言います。

こうした事例を紹介した後、松﨑はTelco Analyticsの導入アプローチとして「ビッグデータを業務プロセスに組み込むことが重要です」と指摘します。データを収集するプラットフォームや、アナリティクスの手法が用意されていても、それが通信事業者の実際のユースケースをカバーしなければ意味がないとの考えです。「ユースケースとは、洞察からアクションを起こし、価値を創造するというビジネスの一連の流れを示したものです。ユースケースを起点に考え、業務プロセスやソリューション、組織を変えていく必要があります」(松﨑)。

最後に松﨑は、「通信事業者も、問題を先取りした行動を起こすために、ビッグデータ活用が不可欠になってきています。そのためのフレームワークとしてノキアはTelco Analyticsを提供します。一方でどのようにデータを活用することで価値が創造できるかは、ユースケースの見極めにかかっています。ノキアは、データ活用の仕組みとしてのTelco Analyticsを提供するだけでなく、通信事業者にとって実績のあるユースケースを提供し、通信事業者の新しい価値の創出に貢献していきます」とセッションを締めくくりました。

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