堅牢な“レンガの家”を最初から建てる先見性を持て ―IoT時代のセキュリティを世界ICTサミットで討論

Date: 
29 June 2015
Location: 
日本

東京五輪が開かれる2020年以降、3Dプリンターやロボット、スマートグリッド、人工知能(AI)、高速ネットワークなどの新しいICT関連技術によって、私たちの生きる社会やビジネスはどのように変化していくのでしょうか。2015年6月8日、9日に開催された「世界ICTサミット2015」(主催 日本経済新聞社、総務省)では、「インテリジェンスが築く都市・ビジネス・社会」をテーマに、これからのICT社会の動向を占う多くの講演とセッションが繰り広げられました。

2日目のセッション「スマート技術でつくる豊かな暮らし」では、社会やビジネスを革新する技術の導入に伴う新しい課題について議論が行われました。パネリストは、ファーウェイ 法人向けICTソリューション事業グループ プレジデントの閻(えん)力大氏、ノキアからノキアネットワークス・セキュリティ事業部門担当バイスプレジデントのジュゼッペ・タルジア、NTTファシリティーズ 代表取締役社長の筒井清志氏、コーネル大学工学部 教授のホッド・リプソン氏の4人、モデレーターは日本経済新聞社 編集委員の関口和一氏という顔ぶれです。

ICT社会がもたらす多くのメリットの裏にある課題

まず、パネリストが自己紹介を兼ねてプレゼンテーションを行いました。ネットワークの側面からはファーウェイの閻氏が「10年前にヨーロッパから日本に来たときに、日本のアプリケーションやインフラが進んでいるのを見てびっくりしました。日本は常に世界のICTを牽引しています。総務省が2014年に公表したスマート・ジャパンICT戦略を見て、日本は世界で最もアクティブな国になるという決意を感じました」と日本のICTの現状を説明しました。

次にノキアのタルジアが、ネットワークとセキュリティの観点からプレゼンテーションを行いました。タルジアはまず、「2025年の世界を見ると、50億人がネットワークに接続し、500億のモノがネットワークにつながっていると予測されます。ネットワークに接続しているモノのうちの50%は人間が直接関与しない端末と考えられています。IoTは素晴らしい社会をもたらすでしょうが、一方でセキュリティがますます重要となります。自動車も冷蔵庫もネットワークにつながり、それらがハッカーの攻撃を受けるわけです。ハッカーの攻撃からデバイスや社会そのものを守る必要が高まります」とIoT時代のセキュリティに警鐘を鳴らします。

そうした中でセキュリティ対策はどう考えたらいいのでしょうか。タルジアは「すべてのデータが通るネットワークが、セキュリティにとってクリティカルなインフラになるでしょう。4Gまでのネットワークではセキュリティ対策はアドオンでしたが、2020年以降に商用化が見込まれる5Gではセキュリティがビルトインされていなければ増える脅威に対応できないと考えています。人間の生命力が強いのは、免疫の仕組みがあるからです。ノキアは、ICT社会を構成するネットワークにも抗体を持つような免疫系を作らなければならないと考えています」と、IoT時代のネットワークとセキュリティのあり方を説明しました。

3番目にNTTファシリティーズの筒井氏が「NTTファシリティーズは、NTTグループの電力と建築の専門家です。通信ではなく、建物の設計から構築、保守までのインフラ系を受け持っています。NTTグループのビルの設計や運用管理、メガソーラーの運用まで多くの実績があります。省エネの実現やCO2発生低減など、エネルギーの賢い活用法と安心で安全な街作りを目指しています」と説明しました。

最後にコーネル大学のリプソン氏は、このセッションの前に行われた自身の講演を受けて、「講演では3Dプリンターについて話をしました。新しい技術の中で、新しいトレンドが見られるようになってきています。技術の背景には、指数関数的な成長があります。通信技術、電力、物流、セキュリティの必要性など、共通の視点をもって社会への影響を考えることが必要でしょう」と語りました。

セキュリティ対策はICT社会の進展に欠かせない課題

モデレーターの日本経済新聞社の関口氏が、「ネットワーク、セキュリティ、エネルギー、3Dプリンターと、それぞれの専門家の話から共通のポイントを見ると、5年ないし10年先に頭の痛い部分はセキュリティのように感じます。インターネットに500億もの機械から電力システムまでがつながると、リスクが増えるでしょう」とセキュリティに話題をシフトしました。

これを受けてノキアのタルジアは「通信事業者は、IoT時代のネットワークのセキュリティを保証することに懸念を示すことになるでしょう」と語ります。「IoT時代には、セキュリティのスタンダードを守っていないデバイスをネットワークに接続することを防げません。システムはオープンにしなければなりませんが、それはハッカーに対してもオープンであることになります。そこで、個別に予防するのではなく、ネットワークにセキュリティの耐性を持たせるという考え方に到達するのです」。

ファーウェイの閻氏も「IoTは人だけでなくデバイスもつなぎます。これまでは産業ごとに垂直統合型で異なるプロトコルを使っていましたが、ネットワークで統合するにはグローバルで共通のインタフェースが必要になります。これまでは孤立していたシステムやデバイスがネットワークにつながることで、情報のバリアがなくなり危険にさらされるようになるのです。セキュリティをエンドツーエンドで考えなければならない時代がやってきます」とセキュリティにおけるネットワークの重要性を説きます。

NTTファシリティーズの筒井氏は、「監視というと、IoT、電源、空調などが考えられます。エネルギーセキュリティでは、重要なところがネットワークでつながっています。エネルギーが止まったら、通信事業者の通信ビルがダウンしてしまうわけですからリスクは高いと考えています。これまでにも、直接事業に関わる影響はなかったものの、通信ビルなどへの攻撃は実際に何度かありました」とインフラ系への攻撃の耐性の必要性にも話題を広げました。

コーネル大学のリプソン氏は、「ロボティクスの中で、セキュリティは重要な課題です。クルマとクルマが通信する“V2V“では、悪意ある情報を送ることが可能になりますから事故を引き起こす危険性もあります。銀行のハッキングのように、リアルタイムでセキュリティの問題が発生することもあります。ロボットで動くような自律型のシステムにとっては、セキュリティは特に大きな課題で、安全なシステムをどう作るかの策が求められています」と、社会に広くセキュリティが関連することを示唆しました。

最後に、モデレーターの関口氏が「2020年に東京五輪が開催されます。2020年は新しい技術革新の時になるでしょう」とタイムテーブルを示すと、タルジアは「2020年に商用化が見込まれる5Gでは、ネットワークのパラダイムそのものが変わるでしょう」と話を続けました。

タルジアは「ネットワークのインテリジェンスがコアネットワークに集中する形から、より分散的なクラウド型のネットワークに変化します。ネットワークがインテリジェンスや解析機能、自己構築機能を持つようになる変化も起こるでしょう。2020年の五輪を考えるとき、3匹の子ブタの寓話が教訓になりそうです。3匹の子ブタは、藁、木、レンガでそれぞれ自分の家を作りました。結果として、狼が来ても末っ子のレンガの家は壊れませんでした。何かを構築するときには結果を考えなければなりません。2020年の五輪まで5年しかありませんから、ノキアは最初からセキュリティを考えた“レンガの家”を考えることを提案します。狼が来ても壊れない頑丈な家を立てることで、日本のお手伝いをしたいと考えています」と語り、今後のネットワークセキュリティの根本的な考え方を日本の聴衆に示しました。

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