10Gbps伝送やマッシブMIMOをデモ、 5Gの最先端が集結した「Brooklyn 5G Summit」

Date: 
20 May 2015
Location: 
日本

4月8日~10日に米国ニューヨークで開催された「Brooklyn 5G Summit」。第4世代移動通信方式のLTE-Advancedのさらに次世代となる、第5世代「5G」技術の研究開発について議論する招待者限定のイベントです。今回は、10Gbpsの超高速無線伝送デモや多素子アンテナを使ったマッシブMIMOのデモなどを通して、より実用化に近づいた「5G」技術の姿が見えてきました。

ニューヨーク大学とノキアが主催するアカデミックな意見交換の場

5Gの技術開発では、ヨーロッパではEUが、日本、韓国、中国などアジア諸国では政府がそれぞれ主導して、フォーラムやプロジェクトを推進しています。これに対して、米国では民間企業や大学による独自の研究開発が主流です。こうした中で、「Brooklyn 5G Summit」は、米国で「5G」の技術開発の成果を発表し意見交換を行う貴重な場です。ニューヨーク大学科学技術専門校のNYU WIRELESS研究センターとノキアとが主催し、2014年の第1回に続いて2015年に第2回目のイベントが開催されました。

ニューヨーク大学とポスターセッションの様子
「Brooklyn 5G Summit」が開催されたニューヨーク大学と、過一場内のポスターセッションの様子

主な参加者は、主催のニューヨーク大学とノキアのほかにも多岐にわたります。通信事業者としてAT&T、スプリント、T-モバイル、監督官庁としてFCC(米連邦通信委員会)、学術団体としてカリフォルニア大学バークレー校、テキサス大学、ブリストル大学、ドレスデン工科大学、フィンランドのVTTテクニカルリサーチセンターなどが名を連ねています。また、ナショナルインスツルメンツ、インテル、クアルコム、エリクソン、ファーウェイ、サムスン電子など世界の名だたる企業も参加しています。日本からはNTTドコモ様、三菱電機様が参加しました。参加者は2014年には約150名でしたが、2015年は約200名へと増加し、会場の熱気も一段と高まってきました。

マッシブMIMOなど実用化に向けた技術で議論が進む

2014年のBrooklyn 5G Summitでは、5Gで利用が想定される高い周波数帯がどれだけ通信で使えるかを知るための伝搬特性の調査をする「チャネルモデリング」の議論が中心でした。それから1年が経過し、今年は実用化に向けて一歩進んだ議論が行われました。

セッションで議論を行うほか3種類のライブデモも実施した
2015年の「Brooklyn 5G Summit」には約200人が参加し、セッションで議論を行うほか3種類のライブデモも実施した

今後、3GPPなどで本格的な技術を検証するためには、各社が同じ条件でシミュレーションするベースとなるチャネルモデリングが必要になります。今年は、マンハッタンのビルの谷間や建物内などでどのようにチャネルモデルを作るかの議論が進みました。またニューヨーク大学などから高周波数帯域での新しい伝搬式の提案がありました。Brooklyn 5G Summitは何かを決める場ではなく、今後の3GPPなどでの検討が適切に進むように課題意識の合意を進めるといったスタンスです。

3GPPでも2015年後半から5Gの議論が始まっていきますし、各社はスタディーを始めています。しかし、標準化までの時間はあまり猶予がありません。参加者の間では、2015年末から2016年初にかけて、技術検証のベースになるチャネルモデルが出来上がっている必要があるという認識で合意されていました。

チャネルモデリングに加えて、ビームを絞って適切な端末に電波を届ける「マッシブMIMO」などの具体的な技術についての議論も交わされました。これまで、高い周波数を使った5Gのシステムは、低い周波数の既存のシステムのエリアに対して補完的な位置づけという考え方がありました。しかし、今年のBrooklyn 5G Summitでは、高い周波数を使った5Gでもある程度のカバレッジを単独で提供しなければならないといった意見も出ていました。そのためには、電波の減衰が大きい高い周波数の電波を、端末に対して適切に届ける技術が必要です。そのためにビームを絞り込んで電波の到達距離が伸ばせるマッシブMIMOの技術が有効です。

Brooklyn 5G SummitのキーノートスピーチでNTTドコモ CTO(取締役常務執行役員)の尾上誠蔵氏は、ミリ波帯でも広いエリアのカバレッジが求められること、ミリ波帯で1kmまでセルのレンジを広げるには、6000個のアンテナ素子の集積が必要なことを説明しました。ミリ波帯のような高い周波数でも、多素子のアンテナを使ってビームを絞り込むマッシブMIMOを使えば、面のエリアをカバーできるというわけです。NTTドコモのキーノートスピーチ以外にも、ノキアやエリクソン、サムスン電子がマッシブMIMOを5Gのキーテクノロジーとしてプレゼンテーションを行いました。

10Gbps無線伝送など3つのデモで実用化

Brooklyn 5G Summitのメイン会場であるニューヨーク大学の近くのホテルで、ノキアは3つのライブデモを行いました。1つ目は73GHz帯のミリ波によるビームトラッキングのデモ、2つ目は今回のBrooklyn 5G Summitのトピックでもある74GHz帯を使った10Gbpsの無線伝送デモ、そして3つ目は3.5GHz帯を使ったマッシブMIMOによるビームフォーミングのデモです。

73GHz帯を使ったビームトラッキングのデモ
73GHz帯を使ったビームトラッキングのデモでは、会場の室内で実際に電波を飛ばしてミリ波帯の挙動を体感できた

73GHz帯を使ったビームトラッキングのデモは、2015年3月にスペイン・バルセロナで開催されたMobile World Congress 2015でも出展したものです。今回は、会場の室内に子機を載せたカートを用意し、これを部屋の中を動かして実際のミリ波帯の挙動を体感できるデモを行いました。来場者は、伝搬路を手などで遮るとスループットが低下したり、反射板を置くと電波が反射されて光のように反射波をピンポイントで捉えられたり、部屋の外でドアを閉めると届かなくなったりするといった、ミリ波帯の特性を実際に体感していました。

74GHz帯で10Gbpsの無線伝送に成功
74GHz帯で10Gbpsの無線伝送に成功

2つ目の10Gbpsの無線伝送デモは、3m程度の距離でありながらも、実際に電波を空間に飛ばして実施しました。ミリ波帯の74GHz帯を使い、2GHzの帯域幅で16QAM変調をかけ、2ストリームのMIMOによって、10Gbpsを超えるピークデータレートが得られることを示しました。このデモは、ナショナルインスツルメンツと共同で実施しました。2020年の商用化を目指す「5G」の1つの要件として10Gbpsを超えるピークデータレートの実現が必要と言われており、実際に実機を使って10Gbpsが空間で伝送できることを2015年の段階で示すことができたのは、5Gの実現に向けた大きな成果です。

ビームフォーミングのデモ
多素子フェーズドアレイアンテナを使った3.5GHz帯のビームフォーミングのデモ。4ビームの制御に成功した
(三菱電機様プレスリリースより)

3つ目がマッシブMIMOのデモです。アンテナ部分には三菱電機が開発した多素子フェーズドアレイアンテナを、基地局部分にはノキアのFlexi multiradio 10 BTSを使い、ビームフォーミングを実現しました。デモでは4つのビームを垂直・水平方向の2次元で操作できることを示しました。現行のモバイル通信に割り当てられている最高の周波数である3.5GHz帯を使ったデモです。5Gではセンチメートル波やミリ波といった高い周波数帯を積極的に活用 していきますが、6GHz以下の現行の周波数帯も平行して利用することが考えられています。2020年の5G商用化当初は6GHz以下の低い周波数帯で運用を開始することになるとも考えられており、フェーズドアレイアンテナを使ったマッシブMIMOが3.5GHz帯で実現できたことは5Gの商用化に向けた1つのステップとなります。

来年もブルックリンで会いましょう

Brooklyn 5G Summitはノキアが主催者の1社を務めていますが、商業的なイベントではなく、学会やシンポジウム近いアカデミックな雰囲気で議論が行われています。プレゼンテーションやパネルディスカッションには参加しているノキア以外のメーカー、ベンダーも参加し、フラットに技術的な議論を戦わせています。これから5Gで何が起こるかを、イノベーションを持ち寄って化学反応起こすことが目的だからです。

NTTドコモの尾上氏のキーノートや中村氏のパネルディスカッションへの参加に加え、三菱電機の多素子フェーズドアレイアンテナを使ったデモもあり、日本人の存在も昨年より目立つようになってきました。5Gの技術に対応した新しい半導体に関するインダストリーに直結したようなセッションもあれば、ニューヨーク大学のように高い周波数帯の電波が人体に与える影響の評価といったアカデミックな発表もありました。米国における5G研究開発の発表と議論の場として、2回目となったBrooklyn 5G Summitが有効に機能しているようです。

3回目の開催も予定されており、今年のBrooklyn 5G Summitは「また来年、ブルックリンで会いましょう」と締めくくられました。

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