CoPQ(Cost of Poor Quality)改善に向けた課題解決

Date: 
23 April 2015
Location: 
日本

ノキアは、ICT品質を企業力強化のための戦略的要因と位置づけ、CoPQ(Cost of Poor Quality)改善に向けた取り組みを重ねてきました。ノキア品質部門を統括するバイスプレジデントでありクエストフォーラムのエグゼクティブボードメンバーを務めるDeepti Aroraは、同フォーラムが主催する国際会議「APAC Best Practices Conference」(東京、2015年4月14~16日)に登壇。経験と成果に裏付けられたCoPQ改善の実戦的ノウハウを語りました。

Deepti Arora
<講演者>
Deepti Arora
Vice President of Quality, Nokia Networks
Executive Board Member, QuEST Forum

なぜCoPQ改善が重要なのか

ICTの品質は、ビジネスパフォーマンスを向上させる原動力そのものであり、企業に差別化をもたらす戦略的要因として、CoPQ(Cost of Poor Quality:品質不適合による発生コスト)の改善アプローチをとらえていく必要があります。

なぜCoPQ改善が重要なのか――。ノキアの品質部門を統括するバイスプレジデントでありクエストフォーラム(※1)のエグゼクティブボードメンバーを務めるDeepti Aroraは、売上高20億ドルの企業を例に挙げ、「CoPQを10%削減することができれば、潜在的な純利益を7,000万ドル向上することができます」と語りました。これほどまでにCoPQ改善は、企業の収益性に大きな影響を与えるのです。

もっとも、企業の品質コストはゼロにはなりません。試験費用に代表される「Cost for Quality」や「Cost for Quality per good unit」の2つの要素のバランスを取りながら、最適化を進めていくことになります。

※1 世界のICT市場のサービスプロバイダ及びサプライヤの会員企業から構成された非営利団体。TL 9000をベースとしたグローバル品質基準の策定に共同で取り組んでいます。

CoPQ最適化のための実践シナリオ

Aroraは、CoPQ最適化を実現する次の5つのステップを挙げました。

第1ステップは、戦略的なフレームワークの定義です。CoPQを単一のKPIから測るのは適切な方法ではありません。自社の事業計画を把握し、その方向性にCoPQの改善戦略をすり合わせていく必要があります。「チームメンバーをどのように編成するのか、誰がデータ収集をするのか、どの部門とパートナーシップを組むのか、何か問題があった場合に復旧の仕組みはどうするのか、自動化のトレーニングサポートをどうするのかといった施策まで包括した、全体的な視点が不可欠です」とAroraは説きました。

このフレームワークを基盤に、第2ステップとして改善機会の範囲を策定します。実際にどういったKPIを、どれだけ取り込んでいくのかを検討するのです。さらに、第3ステップとして、それらサブセットが自社の目標に見合った改善機会をもたらすものであるかどうかを検証します。例えば、売上を○○%向上するという目標を掲げているならば、そのための改善効果を具体的に測定することができるKPIが設定されていなければなりません。
第4ステップとして、経理・財務部門をパートナーとして巻き込んでいきます。一般的に品質の専門家は経理・財務の専門家ではないため、CEOや会長に対して数値的な目標や改善効果を示したとしても、説得力を持たせることは困難です。そこで経理・財務部門の支援が重要なのです。経理・財務の専門家が裏付けることで数値目標に対する信頼度は格段に高まり、異議を唱える者はいなくなります。

こうした取り組みを経た後、第5ステップとして、「CoPQを“スーパーKPI”として活用することが可能となります」とAroraは強調しました。CTOやエンジニアに対しても、今後の技術開発がどうあるべきか、品質の観点からどんなことを検討しなければならないのかといったことを示唆することができます。

ただし、現状で明らかになっている問題は氷山の一角に過ぎず、裏を返せば水面下にはまだまだ多くの問題が隠れています。例えば、「ソフトウェアエンジニアの離職をどのように防止するか」「ハードウェアの老朽化にどのように対処するのか」など、今後も次々に浮上してくる様々な問題に対して、常に品質の観点からアプローチし、継続的な改善を図っていくことが重要です。

ノキア自身が直面した課題と解決策

CoPQ改善を推進するにあたって、ノキア自身も多くの課題に直面してきました。Aroraは、そうした中で検討及び実践してきた次のような解決策を示しました。

まずは「教育プログラムの導入」です。そもそもCoPQとはいかなるものなのか、それによって顧客影響を含めどのような悪影響が企業内に及ぶのかといった、品質に関わるステークホルダーの意識を高めていかないことには、改善の取り組みは定着しません。

次に「数値に対する信頼性の向上」です。この課題に対しては、先にも述べたように財務部門をパートナーとして連携していくことが非常に効果的な手段となります。品質ガバナンスに関する議論の場に財務部門を巻き込み、裏付けとなる数値を示してもらうことで、最初の段階から十分な信頼を得ることができます。

加えてAroraが強調したのが「リーダーのコミットメント」で、経営層をはじめとするステークホルダーに対して、特に収益面からどういったプラスのインパクトをもたらすのかを明確に提示すことの重要性を説きました。実際に一度でもコスト削減などの成果につながれば、次回から“説得”のために費やす労力は大幅に低減します。

さらに、このコスト削減によって余裕の生まれた予算の一部を再投資し、データ収集や分析、レポーティングの「自動化」を目指します。これにより、品質部門が抱えている煩雑かつ膨大な作業を省力化することが可能となります。

そして、最も重視しなければならないのが「エンドツーエンドで一貫性を持ったKPIの共有化」です。例えば、研究開発の過程で生じたソフトウェアの品質欠陥をSE部門が発見した場合、双方の組織が分断されたままでは問題解決につながりません。全社組織が首尾一貫した共通認識を持つことにより、様々なケースにおいてどの部門が責任を持って対処するのかというガバナンスを効かせることが可能となります。

企業の垣根を越えたベンチマーキングの実施へ

ノキアはクエストフォーラムのエグゼクティブボードメンバーとして、異なる企業間で共通のKPI定義を利用したベンチマーキングの環境構築においてもリーダーシップを発揮しています。

「例えば、“不適合コスト”といった言葉一つを取り上げても、企業によって位置づけやニュアンスが異なっているのが現状です。そうした中では、自分たちの取り組みが本当に正しい方向に向かっているのかを判断できるフィードバックを得ることができません。継続的なCoPQ改善プログラムを推進していくためにも、企業の垣根を超えてベンチマーキングを行うことができる仕組みが重要なのです」と、Aroraはその狙いを語りました。

そこから導き出されたKPIセットのトップ5が、「顧客報告の問題(PR)」「スクラップ、リワーク、長期在庫」「ペナルティー」「ソフトウェアの瑕疵」「ハードウェア修理」です。
もちろん、これらは非常にセンシティブな情報であり、ベンチマーキングを行う上で生のままのデータを共有化することはできません。そこでクエストフォーラムにおいて採用されたのが「基準化単位」という概念であり、平たく言えばCOGS(Cost of goods sold:売上原価)を基に相対化された数値を利用します。例えば、不適合コストも○○%といった割合で示されるため、絶対額は秘匿されます。

クエストフォーラムにおけるCoPQ KPI化準備チームの活動は2014年にキックオフし、現在は先に挙げたトップ5のKPIに関する定義及び基準化単位の策定を行っている過程にあります。「2015年第3四半期からは、いよいよ実際にベンチマーキングに入る予定です」とAroraは語り、裾野の広い企業に向けて参加を呼びかけました。

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