Mobile World Congress 2015 フォローアップレポート 第3回 柔軟性が求められる5Gを支えるノキアの「クラウド」

Date: 
24 April 2015
Location: 
日本

ITの利用から発展してきたクラウド技術は、通信事業者のネットワークにも変革を与えようとしています。その中核を担っているのが、ネットワーク機能を仮想化する「NFV」、ネットワーク機器をソフトウエアによって制御する「SDN」といったクラウド技術です。NFV、SDNは、2015年3月2日から3月5日にかけてスペイン・バルセロナで開催された通信分野の世界的なイベント「Mobile World Congress 2015」(MWC 2015)でも、地に足の着いたソリューションとして各社のブースで多くの展示がありました。

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MWC2015特集(見どころ)

ノキアもMWC 2015で、通信事業者向けのクラウド技術とその商用化に向けた取り組みを紹介しました。クラウド技術のマルチベンダ環境での利用やクラウドのセキュリティ対策といった現実の要求に応える製品のプロトタイプや、クラウドの考え方を無線アクセスネットワーク部分まで拡張した新しいソリューションなど、一歩先の取り組みが多くの来場者の注目を浴びていました。

クラウドでマルチベンダやセキュリティ対応を実現

MWC 2015のノキアブースでは、クラウド分野で2つの新しい製品のプロトタイプを披露しました。1つはクラウド上の機能を管理する「Nokia Cloud Network Director」、もう1つはセキュリティ機能を提供する「Nokia Cloud Security Director」です。

ノキアは、2014年のMWCでNokia Cloud Application Managerを紹介し、クラウド上でS/PゲートウエイやMME(Mobility Management Entity)などの機能を管理できることをデモで示しました。これらのアプリケーションに加えて、ハードウエアのインフラや、通信事業者の既存アプリケーションとの連携などを管理するのがオーケストレータです。NFVを使った複雑なサービスをシンプルに管理できるようにするため、ノキアは、「Nokia Cloud Network Director」を開発しました。

「Nokia Cloud Network Director」は、マルチベンダ対応を前提にしていることが特徴です。NFVの構成要素は、ETSI規格に準拠していればマルチベンダ対応が可能です。しかし、実際にはNFVの各機能を異なるベンダ同士でつなぎあわせて上手くいくとは限りません。ベンダごとに、規格が定めていないコードを独自に使うといったケースが少なくないからです。ノキアは、NFVを利用する環境はマルチベンダが前提になると考え、マルチベンダ対応を進めていることをアピールしました。

ノキアブースでは、オーケストレータとして動作するNokia Cloud Network Directorが、下位の層に他社のNFVの機能があっても連携して動作できるように設計されています。これまで通信事業者向けの機器の提供で培ってきたノウハウを生かし、オープンインタフェースとマルチベンダを軸にしたNFV製品の提供を推進します。Nokia Cloud Network Directorは2015年第3四半期の商用化を目指しています。

セキュリティ対策も今後の通信ネットワークのクラウド化で避けて通れない課題です。社会インフラである通信事業者のネットワークがクラウド化された場合には、高いセキュリティレベルや信頼性が要求されます。ノキアブースでは、セキュリティ対策へのひとつの回答として「Nokia Cloud Security Director」を紹介しました。

Nokia Cloud Security Directorは、通信事業者のクラウド上のセキュリティ環境を統合的に管理します。ハードウエア、ハイパーバーザー、仮想化されたネットワークの各機能のそれぞれにセキュリティプロファイルを設定可能です。Nokia Cloud Security Director とNokia Cloud Network Directorを連携させることで、通信事業者が新しいサービスを提供するときに、サービスを実装すると同時に自動的にセキュリティ機能を提供できるようになります。マルチベンダ環境でもセキュリティ機能を提供できるアーキテクチャを採用することで、これから通信事業者のクラウドに求められるマルチベンダ化とセキュリティ対策の両面に対応します。Nokia Cloud Security Directorは2015年第4四半期の商用化を予定しています。

コアネットワークに続いて無線基地局も仮想化

MWC 2015のノキアブースでは、通信事業者のクラウド化に向けた新しいアプローチの展示が目を引きました。それが、コアネットワークだけでなく、無線基地局の一部まで仮想化の対象を広げる「Nokia Radio Cloud」です。

NFVでは、一般にEPC(Evolved Packet Core)やIMS(IP Multimedia Subsystem)、ゲートウエイなどのパケットコア側のネットワーク機能を仮想化し、汎用のハードウエア上で利用できるようにします。Nokia Radio Cloudではこうしたクラウドの考え方を、無線基地局をつなぐネットワークであるRAN(Radio Access Network)にまで拡張しました。無線基地局の機能の一部がクラウド化されることによって、変化する通信状況に対して柔軟にハードウエアリソースを割り当てるような最適化した運用が可能になります。

Nokia Radio Cloudでは無線基地局は、「無線機器とアンテナ」と「クラウドサイトに実装した基地局機能であるeNodeB」に分けて構成します。その間を従来の光ケーブルを使うOBSAIやCPRIに加えてイーサネットによるIP接続で結ぶことを可能にし、柔軟性を高めました。

ブースでは、無線機器/アンテナとクラウドの間を実際にイーサネットで接続し、eNodeBの機能をクラウド化した状態で、実際のLTEのスループットを測定するデモを実施しました。20MHz×2のキャリアアグリゲーションで40MHzの帯域幅を確保した場合は、理論値の最大300Mbps に対して280Mbps以上、20MHzの帯域幅でも理論値の150Mbpsに対して140Mbps以上のスループットが得られていることを示しました。

無線基地局の機能も仮想化することで、コアネットワークだけでなく無線基地局も含めたハードウエアリソースの最適化が可能になります。Nokia Radio CloudではeNodeBの機能を、データセンターとアンテナ近くのハードウエアに分散させることができます。デモでは、昼間のオフィス街や夜の住宅街といったトラフィックが集中する場所の無線基地局に対しては、データセンターのリソースにeNodeBの機能の割り振り先をデータセンターのリソースに多く設定することで全体の処理能力を向上させられることを示しました。Nokia Radio Cloudは2016年末の提供を検討しています。

MWC 2015のノキアブースでは、通信事業者向けのクラウドが、マルチベンダやセキュリティへの対応を進め、さらに無線基地局も含めたクラウド化へと進化していることを示しました。

全3回にわたりお送りしたMWC2015フォローアップレポートは、今回で終了となります。

2020年の商用化が目標となっている第5世代移動通信方式の「5G」では、高速なスループットを要求するサービスだけでなく、高信頼性や低遅延を追求したサービス、桁違いに数が多いIoTデバイスのトラフィックを取り扱うサービスなど、機能や性能の多様化が進みます。5Gの実現には、幅広いアプリケーションに対する知見や、高速広帯域のネットワークサービスを実現する通信技術はもちろん、多様化したサービスに対して最適なネットワークを柔軟かつ迅速に構築する必要があります。MWC 2015のノキアブースでは、5年後に迫る「5G」の商用化を見据えた多くの展示やデモを通じて、既存の技術の発展と新しい技術の開発の両輪がノキアをドライブしていることを示しました。

また5Gに関連して、直近では4月8日~10日にかけて米ニューヨークで開催されたBrooklyn 5G Summitにて、ノキアはNIと共同で73GHz帯を使った10Gbpsの通信速度を実証デモを公開しました。ノキアにおける5Gに関する研究開発の状況や技術解説は、今後も本社HPを通じて公開していきます。そちらもぜひご覧ください。

 

 

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