Mobile World Congress 2015 フォローアップレポート 第2回 1人1日1GBの実現に向けた無線ネットワークの進化

Date: 
16 April 2015
Location: 
日本

ノキアは、2020年をターゲットとした技術戦略として「Technology Vision 2020」を公開しています。ノキアはTechnology Vision 2020で、2020年までにモバイルネットワークは1人当たり1日に1GBという膨大なデータをサポートする必要があると、今後のモバイルネットワークの方向性を示しました。求められるトラフィックは2010年の1000倍にも達するという予測です。一方、2020年の商用化を目指す第5世代移動体通信方式の「5G」の検討が進んでいます。ノキアのTechnology Vision 2020と世界が標準化を進める「5G」は、ノキアにとって技術開発の指針の両輪になっているのです。

ノキアは、2015年3月2日から3月5日にかけてスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2015」(MWC 2015)で、高速、広帯域を実現する無線通信技術やネットワーク製品を数多く出展しました。技術は一足飛びに5Gへとジャンプするわけではありません。MWC 2015のノキアブースでは、現行のLTEや商用化が始まったLTE-Advancedが、次の世代である5Gの世界に向けて進化していく姿が示されました。

高速化

MWC 2015のノキアブースでは、LTE-Advancedをさらに高度化して高速化、高密度化を進める研究開発の成果が展示されました。

その1つが、日本でも「LTE-Advanced」サービスとして提供が始まった「キャリアアグリゲーション」(CA)の技術の高度化です。CAは、複数の搬送波(キャリア)を合わせて使うことで帯域を広げ、通信の高速化などの効果を得るものです。日本では2015年4月時点で2つのキャリアを使った下り最大225Mbpsのサービスが提供されています。ノキアブースでは、3つのキャリアを使ったFDD方式によるLTE-AdvancedのCAのデモを行いました。20MHz幅の帯域を3つ束ねたCAで、60MHz幅を使って理論値では下り最大450Mbpsの2x2MIMO通信が可能です。今回のデモは、3キャリアのCAの通信機能をチップセットに集約し、スマートフォンサイズの端末に実装して実施しました。デモ機で約300Mbpsのスループットが得られていることを示し、3キャリアCAの実用化が間近なことを示しました。

通信の容量を効率的に増やすには、キャリアを束ねるほかに、1つのキャリアの周波数利用効率を上げる方法があります。基地局と端末の間で複数のアンテナを使って通信するMIMO(Multi-Input and Multi-Output)のアンテナの数を増やす方法がその1つです。基地局と端末を2本ずつ(2×2 MIMO)から4本ずつ(4×4 MIMO)にすると、容量は倍増できます。一方で、スマートフォンなどの小型端末に4本のアンテナを実装するのは難しいという問題もあります。

ノキアでは、アンテナを増やさずに周波数利用効率を高める方法として、変調方式を高度なものへと変更する手法にも取り組んでいます。これは3GPPのリリース12で標準化された「256QAM」という変調方式を用います。現行の64QAMと比べて、約30%のスループット向上が見込めます。ノキアブースでは、こうした複数の方法で通信効率を高める技術開発を行っていることを示し、来るべき1人1日1GB時代に対応できるようにすることをアピールしました。

TD-LTE-Advancedの活用の姿も示す

MWC 2015のノキアブースでは、TDD方式の次世代LTEであるTD-LTE-Advancedの導入に向けた技術や製品の展示もありました。

1つが、3.5GHz帯域を利用したTD-LTE-Advancedに対応したRRH(Remote Radio Head)の製品展示です。8パイプの無線に対応した世界ではじめてのTD-LTE-Advanced向けRRH製品で、日本や中国など3.5GHz帯のTD-LTE-Advancedの導入に向けて製品の準備が整っていることを示しました。

もう1つが、TD-LTE-Advancedの3キャリアを束ねるキャリアアグリゲーション(CA)のデモです。これはノキア、中国移動(China Mobile)、クアルコム テクノロジーズが共同で開発した技術で、20MHz幅のキャリアを3つ束ねて60MHz幅にして通信を行います。20MHz幅のTD-LTE-Advancedは理論値が110Mbpsであり、3キャリアのCAにより下り最大330Mbpsの通信が可能になります。

さらに、ノキアブースにはTDD方式とFDD方式の異なる方式のLTEを束ねるキャリアアグリゲーション(CA)の展示もありました。デモでは、プライマリーのキャリアとしてFDD-LTEを利用し、セカンダリのキャリアとしてTDD-LTEを使う構成を示しました。カバレッジの確保には800MHz帯などの低い周波数帯域のFDD-LTEを使い、高速なダウンリンクに3.5GHzなどのTDD-LTEを使うことで、カバレッジと高速性の双方を満たすサービスを提供できます。ブースでは、端末側のチップセットが2015年末に登場する予定との説明がありました。

日本では、3.5GHz帯の40MHz幅にNTTドコモ様、KDDI様、ソフトバンク様の3社が周波数の割り当てを受け、TDD方式のLTEで運用する予定です。ノキアは高度化するTD-LTE-Advancedでも機器開発に力を発揮することで、日本の通信事業者の今後のサービスの展開にも役立てることを示しました。

免許不要帯域の活用やスモールセルの進展の姿も展示

周波数を有効に活用する1つの方策として注目されているのがLTE-U(LTE Unlicensed 、LAAとも呼びます)です。ノキアブースでは、免許が不要な5GHz帯の帯域で既存のWi-Fi方式とLTE方式を共存させて通信できる端末の試作機を展示しました。プレゼンテーションでは、5GHz帯でWi-Fiによる通信が行われているときに、同じ5GHz帯でLTEの通信を行って、干渉などによる影響が起こらないことを示しました。さらに、特定のエリアの5GHz帯でWi-FiをなくしてLTEによる通信だけにした場合には、トータルのスループットがWi-Fiを利用しているときよりも向上することを示し、Wi-Fiよりも周波数利用効率が高いLTEが免許不要の帯域でもネットワーク容量の増加に効果があると説明しました。

MWC 2015のノキアブースでは、「HetNet」(Heterogeneous Network)時代のネットワークの高密度化に対応するスモールセルの新製品も展示がありました。

FZ Indoorは、屋内向けのスモールセルで、小型ながら400ユーザーまで収容が可能な高性能の基地局です。マクロセル向けの基地局と同等のアーキテクチャを採用することで、屋内に十分なネットワーク容量を確保することができます。FZ Indoorでは、LTEまたは3Gの無線機能と、Wi-Fiの無線機能を組み合わせて搭載できるとの説明がありました。屋内でLTEとWi-Fiの通信サービスを1つのスモールセルで提供できるメリットもアピールしました。

スモールセル用の新しいアンテナとして「Flexi Zone eMIMO Omni Antenna」の展示もありました。これは、MIMOを効率的に運用できるようにする360度のカバレッジを持ったスモールセル用オムニアンテナです。セルエッジでのMIMOの性能を約60%高めることができます。MWC 2015の展示の中では地味なものですが、実際にスモールセルでエリアを構築する際に力となる新しい製品です。

MWC 2015のノキアブースでは、商用化が進んでいるLTEの進化の形が、デモや新製品の展示から示されました。「5G」は、全く新しい技術だけが支える通信方式ではありません。ミリ波(mmWave)やセンチメートル波(cmWave)といった現在は通信に使われていない高い周波数を使った高速な通信と、既存の周波数帯のLTE、LTE-Advanced技術を組み合わせて、さまざまな要件に対応する方向性が考えられています。TDDとFDDの両方式間でのLTEのキャリアアグリゲーション(CA)、免許不要の帯域である5GHz帯におけるLTEの運用といった今回のMWC 2015の展示は、今後の5Gへの道のりを指し示すものと言えそうです。

 

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